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研究について
宇宙輸送工学研究室では惑星大気再突入時に宇宙機に現れる課題に対して研究を実施しています。宇宙機が大気再突入し、空気力によってその速度を減じ、着水着地する過程では様々な現象が現れます。宇宙機を用いたミッションの中でも最もクリティカルな過程の1つは、宇宙機が高い軌道速度を持って惑星大気に再突入すること、空気力で減速させられることによって特徴づけられるものとなります。

研究の対象
再突入時において宇宙機近傍に現れる流れ場は非常に多様です。例えば以下のような現象と問題が宇宙機に生じます。

  • 地球低軌道(高度100km以上):自由分子流、希薄気体効果が支配的となります。
  • 大気再突入(高度100-50km):極超音速・低レイノルズ数な流れが現れます、このとき宇宙機には空力加熱や通信ブラックアウトなどの問題が生じます。
  • 緩降下(50km-10km):空力減速が強く現れる高度では、超音速〜遷音速流かつ乱流の影響が顕著となり、空気力による姿勢不安定性が現れることがあります。パラシュート開傘などのクリティカルなイベントもこの高度です。
  • 着地着水(高度10km以下): 空力減速もほとんど終了し終端速度に至りますが、ガストや大気密度の不確かさの影響を強く受けます。これらは着地点予測を悪化させるため、宇宙機の空力特性を適切に把握し着地点予測の高精度化が重要となります。

本研究室ではこのような現象と問題に対し、計算科学的アプローチや風洞試験などを用いて課題解決を図っていきます。

研究の方法
「富岳」コンピュータなどの大規模計算資源による計算科学的アプローチや、JAXAなどの大型風洞を利用した実験参加も積極的に行っています。これらを通して、再突入機に現れる高速流体の定量的理解、宇宙工学への展開を目指しています。JAXAや様々な大学との共同研究を行い、宇宙機設計開発や宇宙機を用いた科学・工学ミッションへの貢献を実施しています。